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お火焚き祭
部材位置示し墨書
京都駅前ヨドバシビル内展示のため、鉾建てをした日から遡ること2週間前、当保存会は各部材の位置を示す墨書を実施いたしました。
さてこの墨書、めったやたらに書けば済むものではありません。部材によっては300年の後世にも伝わるものですので、現在の町人の美的センスが問われるわけです。無論、実際巡行参加時に手伝い方(作事方の1セクションで基礎部部材を組み立て縄がらみを施す集団)にわかりよいようにしておく必要があります。
さらには、文字そのものも大変重要です。当然「よい字」を書きたいわけですが、いにしえの名書家(王羲之や三筆・三蹟)のそれは余白と濃淡を楽しむ絵画芸術に近く、部材にはめこむには系統が違います。かといってカチカチの明朝体では遊びがなくただ書いただけに終わってしまいます。
他の山鉾の部材位置書きを観察してみますと中には非常に面白いものがあります。変体仮名を使ったり、場所により字体を変えてあったり…と。これは例えば荒物櫓北面の貫が上から3本あると「北上・北中・北下」となるわけですが、上から順に草書・行書・楷書の順で書いたりするわけです。こうすると「北下」は楷書で堅く地に足がついた感じが出ますし、「北上」は草書で雲にたゆたうような感じの字を人々が夏の青空に向かって見上げることになるわけですね。昔のセンスと遊び心を感じます。
さて、大船鉾ですが筆入れを依頼しましたのは四条町ゆかりの書家「窓月庵 坐屼」先生です。そして、鉾の中心(櫓の真ん中)に立ったとき全ての位置書きが見えるようにし、統一感を持たせました。我々もなかなか機会がありませんが、部材を組み立て縄を巻く直前に櫓の中に立つと辺り一面に見事な墨書が現れ壮観で思わず息をのみます。
変体仮名や篆書を織り交ぜ、畏怖の対象たる鉾として実に見事な墨書きができたと自負しております。是非一度、ヨドバシビル内展示室にてご鑑賞下さいませ。