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お火焚き祭
木部材料について
平成23年10月23日よりヨドバシカメラ内展示場で披露致しております大船鉾の基礎櫓及び舟形舞台に使われている材料についてご説明いたします。この部分は京都青年会議所の篤志により完成いたしました。
当大船鉾の基礎木部はおおまかに、四本柱(荒物)・貫12本・筋交8本・土筋交2本・虹梁2本・ハネギ4本・ハネギ支え2個・軸吊り2本・衣装柱受け枕材3本で構成されています。このうち北下・南下の貫(※後述)以外は全て三重県産の巨大なヒノキを複数用いました。特にハネギ材4本は芯持ち・それ以外は芯去りにて適材適所に組んであります。
※北下・南下の貫は基礎櫓+舟型舞台+屋根屋形+囃し方の重量を全て受ける材であるため強靭な赤樫の芯持ち材を用いています。
また舟型舞台の部材は、大引き2本・大引き受け2本・舟型欄干基礎部(片舷3本×2)・床板24枚・欄干部(片舷4つ×2)・舳(みよし)形成部・艫(とも)形成部で構成され、こちらも三重県産のヒノキの特に巨大なものを使用しております。こちらは舟型を表現する部材が多いため、カーブした部材が多数必要となります。このカーブ、すべて「削りだし」製法にて製作致しましたため、「特に大きな」材料を必要としたわけです。
さて、ヒノキについてですが特に目地の詰まったきめ細かいものを用いました。この様子は展示場内で木口(切り口)をご覧いただけますとご理解いただきやすいかと思います。木というのは1年間に1本の年輪を増やしながら成長します。この年輪と年輪の間の組織が緻密なものほど、細胞が多く密度が濃くなります。もし興味がおありでしたらホームセンターなどで日用品として売られているヒノキの切り口と比べてみてください(※後述)。密度が濃ければそれだけ材としての耐久性・耐朽性(※後述)が増し、鉾として安全な巡行をより長く行えるひとつの指標となります。目地の細かいヒノキといえば尾州檜がその白眉ですが、かといって鉾の部材にこれを多用するのは早計でしょう。尾州檜は軽軟なため鉾の激しい揺れや急ブレーキなどの衝撃に連年耐えることが難しく思います。
※ホームセンターのヒノキの名誉のために付け加えておきますが、一様にこういったヒノキが悪いということではありません。成長を促進させ多数生産し、安定した価格で我々に提供してくれることも大切な要素と言えます。
※耐朽性は水分などで材が犯され腐食することに耐える力です。目地が粗いとその分多くの水分を吸収しますので比較的腐り易くなります。また大船鉾部材では、この耐朽性をあげる為、目地方向に沿った手かんな掛けを徹底いたしました。こうすることでほとんど細胞をキズつけず、長年にわたり水をはじいてくれる事を期待しております。
当四条町としてはこれらの部材を大切に使い、我々の子から孫、曾孫、玄孫…その後のなんと呼んでよいかわからない孫たちにまで、無事渡してゆきたく思っています。またこれらの木部が一刻も早くぎしぎしと音を立て洛中を巡行する日を楽しみにしております。どうか皆様のご声援をたまわりますようよろしくお願い致します。