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京都ライオンズクラブ様のご寄贈
大船鉾細見 天水引
2013年5月10日 21:29
天水引 ~金地雲龍文綴織~
天水引とは屋根の柱まわりを飾る織物で、最も高い位置に掛けられる事からこの名でよばれます。
作りは綴織で金糸・絹色糸を用い、画面横方向に経糸をはしらせ、小ぶりな緯糸で文様を織り出しています。これは着物の帯などと同じ製法になります。そのため鉾に掛けたときの強度はやや弱いものの、織りこみが堅牢なため200年以上経た今もあまり傷みが目立ちません。また、なべて他の鉾も同じですが唯一裏地が人目に触れることから、裏地裂も凝らしてあります。
次に絵柄ですが、金糸を地色として用い、大胆に龍を天駆けさせてあります。双方の龍とも下から見られることを意識してか、腹を多めに見せています。そして紅蓮の焔をほとばしらせます。左舷の龍は右手に如意宝珠(或いは法螺)のようなもの
を持っています。ここで面白いのは単なる玉や火焔玉でないことで、大船鉾中で数少ない仏教色を感じる衣裳です。(神仏習合の時代なので不可思議ではありません) 目線はかっと天を睨み、口を控えめながら阿形に保ち、左手と左足で力いっぱい気蓋の上を櫂でゆきます。この龍はその英気大略ぶりから通称「朝倉宗滴」と呼んでいます。右舷の龍は見返りで、何も手にしません。ただ、現状のまま右舷に掛けますと顔の向きこそ進行方向へ向きますが、体の向きはバックします。そこでひとつの仮説として、この幕の焼け具合が左舷に比べてマシなことなどと総合して、もともと裏側を表に使っているのではないかと個人的には想像します。口を閉じ静かに下方を眺めるこの龍は、その博学才穎な様子から通称「太原崇孚」と命づけています。前後の雲は基本的に同柄をめざして色を変えています。ただ綴織のため全く同じではないところも鑑賞ポイントでしょう。この幕には屋形復元設計の骨子となった「曰くつきの折れ目」があるのですが、個人的に疑問点が多く、語りつくせぬところがあります。また左右舷で長さも違いまして、こちらも謎の多いところです。是非今年のお飾り席や、来年の鉾に掛けた時に細見していただき、大船鉾を応援下さいますようお願い申し上げます。